恐ろしいもの

専制政治は、民主政治からも生まれるのです。いや、民主政治だからこそ、専制政治となる。 なぜ、民主政治が専制政治になるのでしょうか。それは、民主政治の意思決定が、基本的に多数決によるものだからです。考えてみれば、多数派の意見が少数派より優れているとは限りません。むしろ、正しいことを知っている優れた人物というのは、たいてい数が少ない。 ところが、民主政治では、多数派の意見の方が正しいことになっています。そこには、人々の能力に優劣がなく、平等だからという暗黙の前提があります。人々の知性が平等であるならば、確かに、数が多い方が正しいだろうということになる。 多数決の民主政治では、少数派は、多数派の決定に逆らうことはできません。つまり、すべてを決める専制的な権力が、多数派に与えられるのです。